「だあっ！　アニキ、なしてチャンスにタコやねん」
　ラジオ中継にいちいちツッコむタカフミ。昨日の神宮球場でのスワローズ戦から、今日は東京ドームでの伝統の一戦。しかし阪神タイガース、今夜も敗色濃厚だ。
「タカフミ、今シーズンはもう諦めなさい」
　ネットニュースで、ダルビッシュの完封を見て、札幌生まれの倉澤チーフはニンマリしながらも、凄まじいタカフミのトラキチぶりに呆れてもいる。

　今日の非番は、サヤとレオンで、真柴リーダーとヒトミが夕食に出ていて席を外している。
　そこへソラがミッションルームへ戻って来た。先程までメインコンピュータセクションに篭り、昨夜地球に侵入した別な宇宙からの飛来者について調べていたのだ。
　だがルナやスペーシー、そしてジュネーブにあるＢ・ｉ・Ｒ・Ｄのホストコンピュータ『ファザーＵＲＡＮＵＳ』にも、それらしい記録はなかった。

「あ、ソラ」
　ちょうど夕食から戻ってきた真柴リーダーが、ソラに気づき話しかける。
「確かテラちゃん、今日、熱海から帰るのよね」
「あ、はい。六時に熱海を出る新幹線で新横浜まで戻って、あとはバスで」
「さっき『カナリー』でニュース見たわ。静岡駅近辺でのぞみの車輌故障で、新幹線、名古屋から東京まで運休しているわ」
「え……」
「車輌故障が発生したのが夕方五時半。それからすぐに運休になってたわ」
　今はもう夜八時半を回っている。

「すみません。私用電話します」
　真柴リーダーが頷き、ソラは通信インカムをつけて、テラの携帯電話の番号にアクセスした。
「あ、兄さん」
「テラ、今、どこにいるんだ？」
　無事な弟の声に、ソラは安堵する。
「今、熱海の駅にいるんだ。切符は払い戻し出来るって駅員さん言うけど、どうしよう」
「テラ、もう今日はシティへ帰るのは無理だ。熱海でホテルを探して泊まって、明日のお昼にゆっくり帰っておいで」
「え、ホテル……？」
　一人で旅をすることに慣れているソラと慣れていないテラでは旅のトラブルへの対処が違う。そんなテラに真柴リーダーが話しかける
「テラちゃん、よく聞いて。今、熱海駅前にあるステーションアタミに、シングルルームを取ったわ。請求はソラに回すように手配したから、天河と言えば大丈夫よ。
　宿泊カードには、自分の名前と住所を書いて。学生証は持ってるわよね。身分証明を求められたら、それをフロントマンに見せなさい。
　ご飯はないから、コンビニか駅で何か食べなさい」
「わあっ、ツクヨさんありがとう。兄さん、じゃあ明日帰って来るね」
「テラ君、夕食は食べてるかい。コンビニで買うなりルームサービスを頼むなりして、食べてから休みなさい」
「テラ坊、土産はいらんで。気をつけて帰って来いや」
「テラりん、気をつけて帰ってね」
　ソラのインカムに、ミッションルームの全員が交代で、テラに語りかける。
「うん、わかった。ステーションアタミに今から行くね。コンビニでカップ麺買ってから行くよ。じゃあ兄さん、ツクヨさん、タカフミさん、倉澤先生、ヒトミさん、ありがとう。おやすみなさい」

「すみませんでした。私用電話なんて」
「よかったわ。テラちゃん無事で」
　ミッションルームの空気が和らいだ。だが……。


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「フフ、天河ヨハネ碧宙。この男とウルトラマンゼロが一体化してるのよね。この男の弱点は……」

　夢野市旧湾岸通の廃ビルのアジトのスクリーンの前で、妖艶な美少女に擬態したピット星人はニヤリと笑う。
　ピット星人の前のスクリーンには、ウルトラマンゼロとソラの画像があり、また、違う画像が現れた。

「これがウルトラマンゼロと一体化した、この男の最大の弱点。フフ……」


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　夜も更けて来てスポーツニュースも終わる時間になったころ、唐突に、アリーナ内部に警戒を示すサイレンが響いた。
「ソラ、タカフミ。起きて！」
　仮眠を取っていたソラとタカフミは、直ぐさまミッションルームへ駆け上がる。
「リーダー、何事や」
「旧湾岸通西部に爆発反応。同時に怪獣反応発生」
「旧湾岸通なら、車輌で行くのが一番ですね」
　頷いた女隊長は即座に指示を出す。
「ソラは『グレイ・ハウンド』で、タカフミは『ホワイト・タイガー』で出動！　怪獣反応が小型ながらもあるわ。無理ならすぐさま撤退しなさい。ヒトミ、サヤとレオンを呼び戻して！」
「ラジャー！」
　ソラとタカフミは、すかさず武装してヘルメットとグローブを着けて戦闘車輌車庫へ向かう。トヨタとの共同開発による『グレイ・ハウンド』およびホンダとの共同開発による『ホワイト・タイガー』
　とはいうものの、後者はリペイントされどこから見ても完全に『阪神タイガース』だ。
　そんな二台の戦闘車輌はホバー機能で海上を飛びながら、今はスラムである旧湾岸通へ急行する！