１９７８年に１年だけ、僕も子供会活動をさせていただいた高島平団地から思った事です。そこは日本の高度経済成長時代に、本当に日本各地から住まいを求めて来た人が集まった所でした。時々テレビでも放送されますが、子供会などの目的別に集まる事はあっても、人々が自然発生的に有機的に結びつく、いわゆる「共同体」ではなかったわけです。共同体作りも目指した人たちもいましたが、結果はどうだったでしょうか。又、１９７０年代は「自殺の名所」とも呼ばれ、飛び降り自殺も多かった。その理由は様々にしろ、人々の有機的な結びつきが欠落すれば、人々は孤独感を強め、悩みがあっても相談できないから、自殺にもなるとよく聞きました。


　　最近気が付きましたが、僕の見た所の全部が以上と同じだったようです。経路は違っても。


　　端的な例が多磨全生園。国の隔離政策のため、これも「全国各地」から集められたハンセン氏病患者たちが暮らしていた。出身県も違う者同士だから、価値観も、話も合わない。ハンセン氏病差別の原因の見方も元患者たちは出身により、違うため、僕も異なる意見ばかり聞いて、ただでさえ医学知識もないのに、訳が判らなくなった事を覚えています。特に気が合った伊藤まつさんとしか、付き合えなかったのも当然だったかもしれません。

　　島田療育園もそうでした。僕が付き合った３人の身障園生も出身地はバラバラ。東京、群馬県、新潟県と。「園生間は仲が悪い」と二人の園生から聞きましたが、それも当然でしょう。

　　更には、僕の所属した全ての会がそうだったと。出身地も、価値観も異なる人同士が何かの目的で会を作る。意見などの食い違いでケンカにもなる。福祉会だろうが、親睦会や身障会だろうが、続かない。その中には、光明養護学校の人達が集まった身障会もありましたが、出身校は同じでも、出身地はバラバラ。高島平団地などと変わらなかったわけです。それでムリして一緒に運動しようとしたから、意見も合わなくなり、続かなかった。大体、光明養護学校の児童・生徒・父母とそうだし、それは戦後の東京の公立学校もそうです。勉強という目的がある内は何とか交友できても、卒業したらバラバラになるわけです。

　　　何も高島平団地に限った事ではないでしょう。又、戦後に限らない。明治時代からそうでした。明治時代の小説やドラマにもたくさん出てきますね。ヨーロッパでは、もっと早くから以上の現象が起きていました。それゆえ、資産家たちは非常にお金を大切にした。人と人のつなぎが欠けると、人間はお金か権力を頼るようになる。マルクスが「社会はお金に支配されている」と見た根拠もそこだと思われます。更には、その後に生まれたニーチェは「つなぐものは何もない」と言い、経済混乱でお金の信用も失われた１９３０年代のドイツでは、人々は権力を求め、ナチスが出ましたね。

　　　僕の経験に戻りますと、８０年代に行った教会は「教会共同体」を牧師たちは説きました。でも、話が変なのですね。教会組織にばかりこだわっている。一方では、神も、祈りも信徒を結ばず、牧師たちも「人をつなぐものは何かね」と悩む始末。今の僕が気が付くに、そこは牧師も、信徒も共同体自体を知らなかったようです。共同体と組織を混同していた。共同体は自然発生的にできるのに対し、組織はある目的の下、人為的に作られるものです。組織には祈りも、信仰もないわけです。その果てにレイプ牧師を二人出したのも、そのような背景もあったと思います。

　　　最後に、コロナも絡み、このまま世界はバラバラになるでしょうか。それとも、世界同時進行しているから、ＩＴ発達とも絡み、自然に「世界共同体」という動きになるでしょうか。少なくとも、今は両方の動きが世界各地にあると思います。前者の動きが強ければ、ナチスみたいなものが世界各地に出ますが、後者ならば、世界平和になる。どちらにしても、資本主義はもう続かないでしょう。