昨日のニュースで、ある学習塾会社が「パソコンを用いた遠隔教育」と報道された。やればできるわけである。それどころか、学校関係では、そのような案も聞いた事がない。何だろうと思った。


　　「一律」とか「三密」は、学校では明治からあった。かなり前、教会で戦前の学校で「天皇を神と思わせる教育が行われた」と牧師たちの怒りの声を聞いた。確かに、天皇もどう考えても神ではない。中世以降のヨーロッパやアラブの皇帝、王様を見ても、そのような例はない。それらでは、あくまでも「神の下」の皇帝や王様である。中国や朝鮮の皇帝、王様も儒教の「天の下」という考え方である。その戦前の発想もおかしかったが、それを「教育で一律に教えた」点はもっとおかしいと今の僕は思う。そのように思うか、どうかはあくまでも、個人の内面の問題なのに。因みに、日本では知られていないが、天皇を教育で絶対者と思わせる手法を、レーニン死後のソ連がそっくり取り入れ、そのままレーニンとスターリンの絶対化にした。「神」という言葉を「社会主義革命推進者」として。恐らくは、その手法はその後の中国の毛沢東絶対化や、ポル・ポト、北朝鮮の金日成以下の絶対化にもつながっていると考えられる。「元首を神」はヨーロッパの右翼には見られないし、日本の場合は特殊。また、思想の右も、左もないと思う。でも、それらも「一律」の現れの一つに過ぎない。以上の共産圏でも、一律教育が強く行なわれていたし。


　　　「一律教育」で強い害を受け続けている者の一部が障碍児者である。戦前は特に身障児、戦後は精神障碍児が学校でいじめられている。障碍を持つ人たちは普通の人とは「違う」訳だから、一律を強制する教え方ではどうしても差別される。野口英世も手の障碍をバカにされた。幸い、担任の先生がしっかりした考えの人だから、野口英世に差別された辛い気持ちを作文に書かせ、発表し、「バカにしてはいけない」と指導したから良かったが、そうではなく、イジメ続けられ、自滅していった身障児が戦前はたくさんいた。戦後は特に精神障碍児がバカにされている。そのような学校でのイジメを受けた方の悲しい声も僕は近年聞いた。ひどいわけだ。


　　　「一律教育」を受けた人たちが多くなった明治後期あたりから、ハンセン氏病隔離がひどくなっている。それも大いに関係あると見ている。「違う人」がいて悪いのか。悪くないじゃないか。


　　　その他、三密から視野の狭さをもたらす。昭和初期の政治の狂いや軍部台頭の大きな要因もそれではないか。「学校」が大いに絡んでいると。軍部や政治だけを叩いても始まらないかもしれない。

仮に、満州事変以降の戦争がなくても、日本はまともにはならなかった。ソ連みたいに内乱が起きたり、最後は自滅した可能性が高い。

　　そして、戦後も学校関係は「一律・三密」は反省される事もなく、続いている。１９７０年ごろの羽仁進氏の警告通りである。そのころから、マスコミも学校内のイジメの問題を取り上げるようになったが、野口英世の例の通り、本当は明治からあった事である。いじめられた人たちが告発しなかっただけで。更に、旧日本軍であったとされるイジメも、一律化そのものではないか。「違った事を言う人」がいじめられたと、軍隊に行った世代だった父から聞いた事もある。でも、似た事が、７０年代の首都圏の身障会で多くあったから、これも皮肉な事だと。前も話した通り、そこでいじめられた身障者の旧友の話も聞いている。辛かったと。自らも世間で「違い」を差別される事の多い身障者が仲間を組むと、一律化を求めて、発想が違う身障者を叩く。何だろうと思う。日本社会に「一律化」は染み通っているのかもしれない。


　　そして、学校で「遠隔教育」も行なわれたら、一律化はかなり解消される。三密も。もっと喜ばしい事として、難病でどうしても学校に行けない子供たちも教育が受けられる。それだが、僕の中学時代にもそのような子が組にいた。難病で体が衰弱し切っていて、外出も全くできない子。学籍だけ置いて、本人はテレビの中学生の勉強番組で独学していた。本人は「通信教育」と言っていた。たまに担任の先生が訪問していたが、勉強を教える事はできなかったはずだ。年に２回くらいしか行けないから。たまたま家に来ていた叔母の代筆で、その子に手紙を書いた事を覚えている。その子は、中学卒で学校を止め、間もなく、天国に行った。「遠隔教育」から思い出された事である。そのような子は今も日本にも多くいる。そのような子の教育権のためにも、「遠隔教育」は必要。また書く必要もありそうだ。