コロナの影響で、日本でも「９月入学」の意見も出ている。そうすると何が変わるのか。または、何も変わらないのか。そうしてみないと、判らないだろう。


　　入学時期はともかく、少し前に書いた「西洋の事を判らないで、真似した」の事から、光明養護学校を卒業した僕だが、「学校について、どのような所か、判っているのか」と自問した。「判っていない」が正直な所だった。確かに、学校の目的の一つは勉強だろうが、それは何も学校でなくてもできるわけである。島田療育園の身障園生たちは学校には行けなかったが、多摩小学校の善意深い先生が来てくれて教えてくれた。独学し、僕や学生たちよりも歴史の事に詳しい園生もいたほどだ。


　　歴史をたどろう。学校制度は明治期に、西洋からもたらされた。教育内容はかなり日本風にアレンジされたものの、形式はかなり真似た。導入した当時の教育役人も、ヨーロッパの学校ができたいきさつとか、目的、その深い精神をどれだけ理解していたのだろうか。ましてや、それに従った当時の教師たちも。その他の日本国民は尚更である。学校も日本の民衆から湧き出たものではなかったわけである。恐らく、今に至る日本の学校の歪みもそこから始まっているのではないか。導入した明治期がそうなら、以後は代々歪みが大きくなるではないか。

　　思想の左右や中道、信仰の別なく、どうも日本では教育改革に手を染める方たちは挫折しているらしい。目立つ。極めて頭の切れる人が教育改革運動に手を出し、数年で挫折した姿も僕は見てきた。今思えば、その人も学校については知らなかったのである。いくら頭が良くても、「知らない」事には何もできないわけである。

　　　今だから話せるが、中核派系の教育改革運動も見てきた。中核派は一応は新左翼系だと言われてきたが、実際は明治維新も否定し、産業が未発達だった江戸時代に範を取るという考え方。明らかにマルクス主義とは違うわけである。その彼らは、学校について「明治になり、国家が強い軍隊と企業を作るために作った制度」と言い、江戸時代の寺子屋に学校教育を戻そうとしていた。確かに、「寺子屋」は民衆から湧き出た教育には違いない。その延長で、助け合いなどの福祉も可能である。でも、寺子屋は仏教やお寺によるつなぎがあって、生まれたものである。仏教が衰退している現代では、復活はできないわけである。それから、学校の日本の明治の目的はそれだったかもしれないが、肝心のヨーロッパではどうなのか。その２つに限らず、彼らは勉強不足だったし、彼ら自身も学校については何も判らなかったわけである。

　　近年の乙武氏の没落も以上が絡んでいたかもしれない。本当に学校の精神を会得していたら、不倫もしなかっただろうから。確かに、乙武氏も学校の目的については何も語っていない。不倫も甘えみたいな個人的な問題でもないと思われる。

　　最後に、学校について「判らないで、真似」は何も日本だけでもないだろう。ヨーロッパ諸国以外の全ての国がそうかもしれない。１９９０年代に出版されたニール・ドナルド・ウォルッシュ著「神との対話」でも、アメリカの学校の荒廃した姿が述べられている。ロシア、中国、韓国、その他の国々でも深刻な教育問題がある。「禍を転じて福と為す」で、コロナがきっかけになり、学校のまともな姿も模索されれば、良いと思うが。（日本の多くの人は「学校は卒業するまでの腰掛」と思っている。又、自分の子が学校にいる間は関心を持つが、卒業したら無関心にも。「民衆から湧き出た」歴史があれば、このようにはならないわけである）。