１．


　　感情移入は人間関係の基礎だと思われる。それができない・困難な人は他人を思いやれないからだ。友人関係・仲間関係・恋愛関係・夫婦とそうである。一方がそれができなくなる夫婦は不和になり、両方ができなくなる夫婦は離婚する。




　　２．

　　ボランティア・身障運動・何かのサポート活動などにも不可欠。僕自身が島田療育園などでよく知っているわけである。




　　３．

　　ところが、それらの活動をする人たちに、最初はできても、次第に他者への感情移入ができなくなる例を僕は方々で見てきたし、僕自身もそのようになっていた。




　　４．

　　理由はこの通りだっただろう。「私は何故○○の所に行くのか」と考えるようになると、それは自問自答の事だから、自分の思考の殻に次第に閉じこもり、独り言に次第になっていくわけである。同行仲間との話し合いの場でも、各自が独り言ばかり言う場面を各会で僕も見てきた。僕自身も独り言をよく言った。その結果、他人の事が次第に見えなくなり、感情移入もできなくなる。特に、ハンセン氏病関係のサポートたちには顕著。療養所に行くと、ほとんどの元患者たちは「何しに来たの。来た意義は何ですか？」と厳しく聞くから。島田サポーター関係よりもはるかに孤立的になり、世間ずれも強かった。僕も彼らとは付き合えなかった。そのような人たちは孤独を紛らわす為か、大変お酒を飲む。強い酒を。そのため、寿命を縮めた例も二人見てきた。一人は女性である。３５歳で病死。




　　５．

　　そのような人たちは恋愛や結婚にも影響が出る。「○○の所に行くのか」と考えている時は、異性への感情移入もできず、恋愛も結婚も困難になる。特に、それ同士は。僕自身もそうなった。僕の結婚遅滞の根本原因も明らかにそれである。同様にまだ結婚どころか、恋愛できない元ボランティアなどもかなり知っている。




　　６．

　　１９７４年に出会った親睦会のボランティアたちもそう。彼らはその前に水俣病関係のサポートをして挫折。いつまでもその事ばかり考えていた。だから、僕などの身障者とも付き合えなかった。誰とも付き合えない状態だった。会もすぐ潰れ、縁も切れた。この会を振り出しに、僕の入った会は端から潰れている。それも判る。会員のほぼ全員が以上ならば、会のコミニティも成立しない。




　　７．

　　やや違うが、７０年代に入った身障会。そこの身障者とボランティアたちは元々独り言ばかり言っていた。理由は不明。最後の会合には僕は行かなかったが、複雑な大ゲンカを身障者同士でしたらしい。ヘルパーさんから聞いた所、その身障者の多くはその後は人と付き合えない状態で、いつまでもケンカの事を思っているとか。無論、感情移入は不可能である。恋愛どころではないわけだ。




　　８．

　　感情移入ができない男性の極端な例は、レイプだと思われる。僕の行った教会関係にも、理由は判らないが、感情移入できない人たちが多く、特に牧師に多かった。レイプ牧師や、その隠ぺいをした牧師も出たわけだ。信仰以前の問題である。




　　９．

　　感情移入できない人の最たる例は、オウム真理教の麻原だろう。誰にも感情移入しなかった。ヒットラーでさえも、お母さんには感情移入したのに。ヒットラーを下敷きに考えてもひどいわけである。




　　１０．

　　　学校関係のいじめなども。戦争を肯定するような政治家も。学級崩壊、東芝などの会社崩壊。日本自体に感情移入ができない人が増えているのではないか。恋愛レスや離婚の件にもなって。

ならば、日本全体も何らかの理由で、感情移入ができない気風が芽生えているのではないか。僕が接して、潰れていった多くのコミニティの件も、天の僕への試練ではなく、日本自体の深刻な問題の一端だったかもしれない。




　　１１．

　　僕と同行してくれた島田への女性ボランティア。「何故、行くか」と深刻に悩みつつも、「島田では人間関係の在り方を学んだ」と話してくれた。今判った気がする。島田は職員間や対園児への感情移入が強く、特にその人が行っていた知的障碍室はその傾向が強かった。貴重な証言であり、小説に盛り込むわけである。僕が本当に今の日本人の感情移入の問題に触れていたのならば、当然それに盛り込まなければならない。




　　１２．

　　以上は僕にとっても、島田を上回る問題であった。行く会でメンバーが独り言ばかり。当然、寂しいし、それ以上に不気味で、恐かった。ここに来て、理由らしいことが見えつつあり良かった。

　　また、恋愛などは感情移入が基本である事も再発見しつつある。確かに、自分が相手を好きだけでは恋愛にはならない。ましてや、セックスは人を結ばない。どうもこの２つにとらわれ、結婚的に非婚になったり、不幸な結婚になる人が日本に増えているようである。僕だけの問題ではない。本当は今日はこの種の事を書く予定だったが、「感情移入」の方がはるかに大切だと思い、書いた。

（因みに、「何故行くのか」にこだわり、一人相撲みたいになったボランティアやサポーターは、一旦何かの機会で、「想いを吐き出す」しかないと思う。１９８５年にそのような元島田などのサポーターの人達を集めて、そのような会を作ろうとしたが、うまくいかなかった。身障会の例のように、ケンカが気になっている人たちも同じ。でも、ハンセン氏病関係は難しく、酒しか紛らわす手はないのかもしれない。現在、僕は島田などに同行した人たちとはＳＮＳ、メール、手紙で付き合い、良好な関係になっている。それ故に、正しく島田を思い出し、小説が書けている面もあると思う。皆と一緒に書く気持ちで書いている。でも、全生園サポート関係は付き合いさえも不可能。住所も不明、ＩＴもこぞってしないわけだから。それは仕方ないと思っている。去る者は追わず、で良いと）。