昔の島田療育園で、脳性まひ児の硬直を緩和するための医療用麻薬投与に至った経緯も小説に書くわけです。それは何も昔の島田だけでもありません。脳性まひ関係の医療の現場で戦後はかなり陰で用いられてきた事です。脳性まひ者自身も自分の意志で硬直が強い時は飲むこともある。中学3年の時、インフルエンザの高熱の後遺症で僕もそうなり、光明養護学校の隣の病院から処方されたそのような薬を飲んだ経験もあります。飲んで、頭にカスミが掛かったみたいになり、何も考えられなくなりました。時に僕は薬品に敏感に反応する体質なので、影響が早く現れたわけです。無論、常用すれば、その他、内臓や血管にも悪いし、脳神経自体の働きも抑えますから、むしろ、脳性まひ障碍が重くなるわけですが。その事を医者として知りながら、他に方策は考えられず、小林医学博士はあえて投与したわけです。例えば、鍼とか指圧が本当は硬直激化には効くし、漢方薬にも神経を和やかにして、副作用はないものもありますが、小林博士は鍼、指圧、漢方は勉強する機会もなかったから、知らなかった。明治以来の日本の医学は伝統医学や漢方系統をバカにする面がありますが、その弊害も島田療育園にも現れていたわけです。他の施設にも同じ事があったと思うし、伝統医学自体が乏しいアメリカではもっと多い弊害だと僕は察しています。日本も越える問題でしょう。医学面だけでも非常に難しかったわけですね。