昔の島田療育園の取り組みは、身障運動・市民運動を自然に越えてしまう面があるのかもしれない。まず、今回の小説予定を職員中心の描写にして、僕自身が痛感したわけです。例えば、昔の光明養護学校を描いた花田春兆氏の描写は生徒中心。生徒たちは、勿論身障者ですね。作家と共に、身障運動家でもあった花田氏にとっては当然の描写でしょう。当初は僕もそのスタイルで、かつての島田を文で再現しようともしましたが、少し前のブログの通り、それでは職員たちが単なる差別者になってしまうため、それはできない事に気が付きました。又、ヘルパーや障害年金要求の運動ともかなり性格が違うわけです。その他、小学校に身障者が行って、いろいろ触れ合いながら介護などを教えていく活動とも違う。実際、最初は身障者たちに「外出しよう」と呼び掛けた１９８０年ごろの身障ミニコミの人たちが島田に行き、当時は状況も判らなかったため、次第に「職員たちは差別者」と書くなど、絶叫文しか書けなくなり、行き詰まり、廃刊になった事もありましたし。今思うと、身障運動のやり方では対応できなくなったからかもしれないと。

　　また、島田にボランティアなど、おかしな所を市民たちが指摘して、改善する動きも７７年ごろにはありましたが、おかしな箇所の根自体が誰にも見えず、これも行き詰まり、立ち消えになりました。「市民運動風にはできない」とそのような人たちは口にするようになった。中には、市民運動自体を「ムリでしょう」と言う人たちさえ出ている。何が市民運動か？という定義も難しいかもしれませんが、少なくとも、その形式の運動ではムリだったわけです。

　　そして、島田の記録を書いていても、今の僕も同様な事を思う。そう言えば、島田に行った人達はずっと市民意識が持てない例も多くなっていた。僕も長らくそうでした。それだけ、根が深い問題の所だったのかもしれません。