「社会変革」とか「改革」という言葉を僕も若い時からたくさん聞いてきた。それはどうにでも解釈できる言葉である。小泉元首相もしきりに「改革」を唱えて、郵政民営化を成し遂げたし、ナチスやオウム真理教もその言葉を使っている。そのような言葉には語感的な問題があるらしい事に僕は気が付きつつあるが、それは明日書きたい。今日はその前に、日本だけでも近代以降の社会変革の歴史を振り返ってみたい。


　　今、ネットでデジタル大辞泉から社会変革を調べたが、「社会体制を意図的、計画的に変えること」だそうだ。過激なやり方と穏健なやり方に分かれているとか。そのサイトはそれしか書かれていなかったが、フランス革命以後のヨーロッパの歴史を見ると、「封建体制の打倒。民主主義と憲法・法律の獲得。人権の追及、人格の尊重」が大きな流れとしてある事が判る。

　　　日本の場合、社会が変わったポイントは、明治維新・帝国憲法発布と国会開設・大正デモクラシー・戦後の日本国憲法発布だと思われる。

　　明治維新はそれまで幕藩体制で冷や飯食いだった志士たちの倒幕運動から始まっている。ペリー来日の前からその動きはあったが、開国で幕府の権威が衰えるとその勢いを増し、更には、幕藩体制では日本は危ない事も志士たちは十分知り尽くし、明治維新を起こし、１１８５年以来の武士中心の日本社会を終わらせた。一種の社会変革には違いないが、志士たちは武士よりも古いはずの天皇を持ち上げての維新であったことが、フランス革命などとの違いである。また、維新後もしばらくは憲法もなく、国会も開設されず、民の権利も制限された状態だった。それ故に自由民権運動も起こり、帝国憲法発布や国会開設につながった。その憲法の内容は、イエ制度尊重など、封建色が強かったし、選挙権も、一定量の納税をしている男性に限られたものだったが、これも社会変革の第２ステージとして評価できる。制限付きとは言え、帝国憲法には「四民平等」や人格・人権の尊重も記されていた事は興味深く思われる。「平等ならば、我々もそうではないか」と思う被差別民や身障者も多く出て、水平社も作られ、身障者や盲人、聴覚障碍者たちも明治後半から障碍者運動を行なっている。大正時代に入り、障碍者運動は更に活発化し、イエ制度の壁を越えて、健康な異性と結婚する身障者や盲人がかなり出た。その大正デモクラシーの延長で、日本で初めての身障児の学校の都立光明養護学校もできたそうである。その他、やはり、明治後半から婦人関係の運動が活発になり、婦人参政権運動も起きている。また、小作人解放運動も。

　　以上の社会変革の動きは、次第に軍部の台頭で抑えられるが、根はしっかりとあり、終戦になり、一気に花開き、それが１９４６年に発布された日本国憲法につながった。それまでのイエ制度尊重ではなく、個人の人格・人権を強く認め、「法の下の平等」も明記。つまり、明治後半以来の民主主義追及の動きが日本国憲法に結びついたわけである。

　　但し、どんなに良い憲法があっても、役人や政治家が運用を怠ると、狂いも出るものらしい。その典型的な例は、ハンセン氏病関係の人たちを隔離させた「らい予防法」である。それは別に戦後憲法や法律がおかしかったわけではなく、それを作った人達が憲法の勉強を怠り、元患者たちの人格・人権を考えなかった点が問題だったと思う。

　　以上、社会変革の歴史を日本から見てきた。社会変革を「封建制打破と、人権・人格の追求」と解釈すれば、その言葉はおかしくないわけである。でも、歴史にはその言葉のおかしな例もいくらでもある。それを次回述べるわけである。最後に、以上の幕末の志士たちや、婦人運動の平塚らいてうたち、明治後半から大正期の、聴障を持つ俳人の村上鬼城など、多くの社会変革者たちに敬意と感謝を送りつつ。