トシコロさんの日記

2019年 02月23日 14:23

実録小説・シマハタの光と陰・第7章・シマハタ初期の日常

(Web全体に公開)

   ♪ 上を向いて歩こう。涙がこぼれないように...。年は明けて、1962年。シマハタにある白黒テレビからも、坂本九の明るい歌が流れている。医者も、職員も、園児たちもこの歌と坂本九が大好きだ。ここのだれもが口ずさんでいる。


  

  職員たちは忙しい。朝は6時に職員寮で起き、朝食後、7時に夜勤明けの職員たちと交代し、園児たちを起床させ、着替えやトイレ、洗面、朝食の介護をする。あと、半数は園児たちに付き添い、歩ける知的障碍児の散歩の手伝いなどもする。もう半分は昨日・昨夜の園児たちの着物や、シーツなどの洗濯。当時の洗濯機はまだ脱水機能も付いていなかった。まず、水道からホースで水を入れ、粉石鹸も一緒に入れ、次いで、そこに汚れた着物などを入れ、タイマー・スイッチをひねると、その時間だけ、洗濯ができる。後は、石鹸水を捨てて、そこにまたホースで水を注ぎ、タイマー・スイッチをまた押し、すすぎをした後、手動脱水装置で、着物を脱水する。腕の力を振り絞って、するわけである。さらに、少し離れた場所に全着物を運んで、物干し竿に一つ一つ干していく。時間も、労力も要する。しかも、園児の数は多いから、膨大な洗濯である。冬の水は冷たく、それで洗濯を担当する職員の中には、手や肩の所が冷えて神経痛を起こす例も出た。また、雨が多い梅雨時は洗濯しても干せないから、非常に困ったわけである。更に、もろもろの介護。特に、入浴の時は大変である。体の動かない園児たちを抱きかかえ、一緒に入り、溺れないように注意を最大限に払わなければならない。その介護の後は職員たちは精魂尽きたように、疲れ果てるわけである。また、夜勤の増加からの体調の乱れもある。


  「最近、私は右肩が痛むようになったけれど、がんばって、子供たちのお世話をするの」。

  「私は、子供たちをいつも抱き起すことが多いせいか、腰が痛むの。でも、歩けない園児たちよりは恵まれているから、一生けんめいやるわ」。





  そのような会話が職員の食事時間でも次第に増えてきた。かなりの職員が腰痛と肩痛に襲われていった。でも、人手不足なので、発熱でもない限りは休ませるわけにもいかない。明らかに無理を重ねている職員が目立っていった。




  林田博士は「このままでは園児と職員が共倒れになる。マスコミを通して、世間に働きかけ、職員を増やさなければ。資金繰りは苦しいが、何としても、増やさなければならない」とつぶやき、NHKや新聞各社に大規模に職員募集をすることを思いついていた。世間は翌年の東京オリンピックの話題が席巻していた。それは華やかなことだが、その陰に取り残された人たちも日本にもたくさんいた。シマハタもその一つであった。

コメント

トシコロ

2019年 02月23日 14:40

以上の腰痛をめぐる職員たちの会話。11月には「立ち腰が多いから」と書いていましたが、読み直すとこの記述は正しくなかった。そんな生易しいものではなかったです。休んだから気が付けました。休んで正解でした。

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